横浜地方裁判所 平成11年(ワ)4690号 判決
原告 相田静
原告 阿部司
原告 荒井吉太郎
原告 飯田敬三
原告 飯干宏壽
原告 小川隆
原告 金山和男
原告 川島忠男
原告 小長谷元昭
原告 小橋純児
原告 佐藤正夫
原告 清水秀男
原告 高哲也
原告 高橋長命
原告 飛沢力
原告 中村辰男
原告 七原昭
原告 西山勝
原告 長谷川清
原告 藤本暢隆
原告 村田一男
原告 山崎敏弘
原告 山田統
原告 吉沢光夫
原告 佐久間圭二
原告 桜井和夫
原告 波多野敬三
原告 松本勉
原告 吉川喜代志
原告ら訴訟代理人弁護士 小川直人
岡田尚
井上啓
菊地哲也
横山國男
伊藤幹郎
小島周一
三木恵美子
芳野直子
杉本朗
被告 株式会社池貝
右代表者代表取締役 稲川昭司
右訴訟代理人弁護士 内藤貞夫
財津守正
主文
一 被告は、別紙債権目録記載の各原告に対し、同目録の請求金額欄記載の各金員及びこれらに対する同目録の請求する遅延損害金起算日欄記載の各日から支払済みまで年六分の割合による各金員を支払え。
二 訴訟費用は、被告の負担とする。
三 この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求の趣旨
主文同旨
第二事案の概要
一 本件は、被告の従業員である原告らが、被告に対し、年末一時金の残金及び被告が実施した帰休制による賃金カット分の支払を求めた事案である。
二 争いのない事実等
以下の事実は、当事者間に争いがないか、又は後掲の確実な書証により認められる事実である。
1 当事者
(1) 被告は、工作機械の製造、販売、修理、設置工事等を行う資本金約五一億五〇〇〇万円、従業員約四五〇名(平成一一年一一月現在)の株式会社であり、川崎市にある本社の他に、川崎、つくば、川口に事業部等を有している。
(2) 原告らは、いずれも被告の従業員である。原告らのうち、原告佐久間圭二、同桜井和夫、同波多野敬三、同松本勉、同吉川喜代志の五名はツクバ事業部に勤務し、また、同七原昭は池貝機販株式会社に、同山崎敏広、同長谷川清、同高橋長命は池貝産機株式会社にそれぞれ出向中である。その余の原告らは、現在川崎事業部で勤務している。
(3) 原告らは、いずれも全日本金属情報機器労働組合(JMIU)神奈川地方本部池貝支部(以下「組合」という。)に所属している。
なお、被告には、右組合のほか、全国金属機械労働組合(以下「ユニオン」という。)が存在する。
2 年末一時金
(1) 被告と組合との間で、平成一一年四月二一日、賃金増額及び一時金に関する協定が成立した。この協定によれば、原告らに支払われる同年の年末一時金(冬期一時金)の額は、新賃金の一・五か月分、支給日は、同年一二月三日とされた。
(2) 被告は、平成一一年一一月一五日の団体交渉において、組合に対し、年末一時金の半額の支給を延期するとの提案を正式に行った。その際、被告は、延期した分の支給時期については現時点で明確にすることができないと説明するとともに、同日付けの総務課長名の文書で、同趣旨の内容を伝えた。組合は、直ちに被告の提案を拒否した。
被告は、同月二六日の団体交渉において、組合に対し、年末一時金の残りの半額を平成一二年六月二〇日までに支払うことを伝え、平成一一年一二月三日、組合員に対し、年末一時金の最初の半額を支給した。その直後における各原告についての年末一時金の未払残額は、別紙債権目録の未払一時金欄に記載のとおりである。
(3) 被告は、原告らによる本件訴訟提起後の平成一二年六月二〇日、原告らに対し、別紙債権目録の未払一時金欄に記載の各金員を支払った。
3 一時帰休による賃金未払
(1) 被告は、平成一一年七月一六日、組合に対して、川崎事業部における休業実施を通知した。内容は、同月二一日から同年八月一二日までの一二日間、休業対象者一人について四日ないし一二日の範囲で休業を実施し、労働日の賃金全額を支給するというものである。組合は、同年七月一七日、被告の右提案を了承し、被告との間に、川崎事業部における休業実施に関する協定が成立した。もっとも、組合は、被告に対し、被告の通知が実施直前で事前に組合と十分な協議が尽くせないことに抗議した。川崎事業部における一時帰休は、右協定に従って実施された。
被告は、同年八月二日、組合に対して、ツクバ事業部における休業実施を通知した。内容は、同月四日から同月一二日までの六日間、休業対象者一人について週三日の範囲で休業を実施し、労働日の賃金全額を支給するというものである。組合は、同月三日、被告の右提案を了承し、被告との間に、ツクバ事業部における休業実施に関する協定が成立した。もっとも、組合は、被告に対し、被告の通知が実施直前で事前に組合と十分な協議が尽くせないことに抗議した。ツクバ事業部における一時帰休は、右協定に従って実施された。(以下、川崎及びツクバ各事業部における右の一時帰休を「第一次帰休制」という。)
(2) 被告は、平成一一年八月九日、組合に対して、同月六日付けの「雇用調整助成金対象の休業について」と題する文書をもって、同月一八日から同年九月一五日までの間の休業実施を提案した。ただし、今回は、第一次帰休制とは異なり、休業日の賃金を六〇パーセントとするとの提案であった。組合は、これに対し、「雇用調整助成金における休業に関する申し入れ」と題する文書をもって休業には応じられない旨を申し入れた。なお、被告は、平成一一年八月一〇日、ユニオンとの間において、右提案の帰休制について協定している。
被告は、実施計画を立てて同提案の帰休制を実施することとした(以下「第二次帰休制」という。)。もっとも、ツクバ事業部では、平成一一年八月一八日から九月六日までは第二次帰休制が実施されなかったが、翌七日から同月一五日まで管理職が原告らのタイムカードを引き揚げた。
(3) 被告は、平成一一年九月の賃金支払において、「不就業差引」の名目で、原告らの一部に対し、次のとおり合計一九万八四〇六円の賃金をカットした。
原告の氏名 休業扱い日 賃金カット額
清水秀男 八月二六日 五九一二円
小長谷元昭 九月六、一三日 一万一七九二円
村田一男 九月六日 六六八九円
小川隆 八月二〇、二五、三一日、九月九、一三日 三万〇〇一八円
金山和男 九月八日 六九〇九円
小橋純児 八月二三、二六日、九月六、九、一三日 三万一四八七円
松本勉 九月八、一〇、一五日 一万六九九七円
佐久間圭二 九月七、一〇、一五日 二万〇二五五円
吉川喜代志 九月七、一〇、一五日 一万七五九三円
桜井和夫 九月八、九、一五日 一万八〇六〇円
波多野敬三 九月九、一〇、一四日 一万七〇九一円
藤本暢隆 九月八、一〇、一四日 一万五六〇三円
(甲一三、一四の1ないし12)
三 年末一時金に関する争点
原告らは、年末一時金の全額に相当する金額の支払いを受けたものの、その半額に相当する金員が平成一二年六月二〇日まで支払われなかったことから、右金員をそれまでに生じた遅延損害金に先ず充当し、その残金を年末一時金に充当すべきであるから、年末一時金に未払分があるとして、その未払分等の支払を請求する。他方、被告は、半額の支払延期はやむを得ないものとして、事情変更の原則により、右半額の弁済期が平成一二年六月二〇日まで到来しなかったから、全額弁済済みである等と主張し、なお予備的に、原告主張の充当方法を争う。したがって、年末一時金に関する争点は、次のとおりである。
1 事情変更の原則の適用の有無
2 本件訴訟が権利濫用となるかどうか。
3 弁済充当に関する黙示の合意の有無
右争点に関する主張は、次のとおりである。
(被告)
1 被告の経営状況等
被告を含む金属工作機械業界は、平成四年以降、年を追って極めて深刻な不況に見舞われてきた。これに対処するため、被告は、徹底した原価低減活動、生産性向上に努め、併せて業容の拡大を精力的に実行してきたが、民間設備投資等の落ち込みは予想を超えたものであった。これらの事情に、金融不安、株式相場の下落等の諸要素、さらには対米輸出の環境悪化も加わり、被告の受注高、売上高、経常利益等は落ち込んできた。また、自己資本比率は七一期(平成七年)から七二期(平成八年)にかけて五〇パーセントを下回り、それ以降も下降を続けている。配当も、七二期は一株当たり僅か二円であり、それ以降も同様な情況が続いている。また、被告の負債総額は平成五年度以降増大し、平成一一年三月の時点では、一六〇億円に達している。そして、被告の経営は、同年四月以降、急速に一段と悪化し、例えば、同月一日から同年九月三日までの七六期中間期は、前年同期と比べて、受注高は一八・四パーセント減、売上高も二四・六パーセント減となった。また、七五期は、無配に転落している。ちなみに、被告を含む金属工作機械業界は、平成一一年四月二六日、構造不況業種として労働省から雇用調整助成金の指定業種とされている。このような情況下、被告は種々の経営努力を重ねて、同年の夏季一時金は何とか支給を完了したが、その後も売上が低迷した。加えて、被告は、金融機関等からの資金調達ができず、平成一一年九月三〇日、七億二〇〇〇万円に及ぶ第三者割当増資にも踏み切っている。
右のような状況下にあって、被告は、組織変更や人事異動を可能な限り行い、人材の有効活用を図ってきた。また、経費節減のため、旅費、残業手当などの諸手当の支給基準を見直し、特に、残業については平成一一年七月以降規制を厳格に行っている。さらに、役員や役職者の手当を減額した。なお、被告は、右の施策の実施については、ユニオン及び組合の二つの労働組合のいずれについても協議を行い、その理解と協力を求めながら、進めてきた。
2 事情変更の原則の適用
被告は、平成一一年四月二一日、同年一二月三日に一時金を支給できるとの経営判断の下に、ユニオン及び組合との間で、それぞれ一時金に関する協定を締結した。すなわち、被告は、右支給を行っても会社の経営が維持し得るとの前提のもとに、右合意をした。
しかし、1で主張したとおり、被告の経営は、平成一一年四月以降、急速に一段と悪化していき、同年九月の第三者割当増資の実施にもかかわらず、同年一二月に従業員に対し一時金(合計金額は二億二〇〇〇万円にも及ぶ。)を支払えば資金に不足を来して、倒産の危機にあり、その半額のみを支払うに止まらざるを得なかった。ユニオンの組合員は、資金繰りが非常に困難な情況等にあることを理解して、年末一時金の半額支給延期についての協定書を締結した。また、部課長については、夏季一時金の全額カット、年末一時金の五〇パーセントカットを実施している。このように従業員の九五パーセントに当たる者が被告の情況を理解して支払延期等に応じている情況の下で、原告らに対してのみ年末一時金の全額を支払うことは、労働者に対する支払条件及び待遇において明らかな不平等となり、労働者を平等に待遇する立場から、そのような不平等扱いをすることができない。そこで、被告は、平成一一年一一月一五日の団体交渉において、組合に対し、年末一時金の支給について半額延期の提案を正式に行う等したが、組合は交渉すら拒否し、結局、協定の締結に至らなかった。このため、被告は、同年一二月三日、協定額の半額のみを支払うに止めた。右のような一時金に関する協定の締結後の事情に鑑みれば、事情変更の原則に従い、一時金の半額については、支払を行っても会社の経営に危機を発生しないと考えられる時点(平成一二年六月中旬)まで、支払の猶予を求め得るというべきである。
3 権利の濫用
原告らが、右のような被告の危機的状況を知りながら、年末一時金の支払を求め、被告をさらに危機に瀕させることは、被告の負担があまりにも大きく、かつ、他の従業員の生活を脅かすものであるから、本件訴訟は、権利の濫用となり、許されない。
4 黙示による弁済充当の合意
被告は、平成一二年六月二〇日、原告らに対し、別紙債権目録の未払一時金欄記載の金額を支払ったところ、弁済金額が右未払一時金欄記載の金額と同一額であること、本件訴訟において、被告が遅延損害金の支払を争っており、当事者双方がその事実を認識していることから、右支払において、原告らと被告との間で、右弁済額を未払一時金に充てることの黙示の合意があった。したがって、同日以降は、遅延損害金が発生しない。
(原告ら)
1 被告の経営状況等
すべて争う。被告の主張は、事実を歪曲して、ことさら被告の経営危機を強調するものである。経営状況の悪化を強調するのは、従業員の人件費をカットする被告の手法である。また、被告は、組合を無視し、ユニオンとの協定のみで、施策を強行した。
2 事情変更の原則の適用
原告らの一時金は、組合と被告との間の協定に基づき発生した労働債権であり、事情変更の原則が適用される余地は極めて少ない。被告の主張によっても、被告を含む金属工作機械業界は平成四年ころから極めて深刻な不況に見舞われており、被告は、平成一一年四月の一時金支払に関する労使協議で金額を低く抑えることが可能であったのに、そのような措置を採らなかった。また、当時、年末における被告の売上額をある程度予想し得たはずであるから、右労使協定から半年の間に予測できない事情の変更などはない。
3 権利濫用
原告らは、汗水たらして働き、家族を含めた生活を維持するために一時金を請求しているに過ぎない。原告らには、これを請求することで、ことさらに被告を危機に瀕しめようとする意図など全くない。
4 黙示による弁済充当の合意
原告らと被告との間で、黙示による弁済充当に関する合意があったことは否認する。原告らは、既発生の遅延損害金、元金の順に法定充当した。
四 帰休制に関する争点
原告らは、被告が組合との協約もなく第二次帰休制を実施したとして、被告による休業対象日も就労し、若しくは有給休暇を取ったにもかかわらず、又は出勤したものの就労を拒否され、違法に賃金カットされたとして、カット分の賃金を請求する。これに対し、被告は、第二次帰休制の実施はやむを得ないものであり、被告には民法五三六条二項にいう「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」がないとし、原告らが現実に就労したとしても、賃金請求権は発生しないと主張する。したがって、第二次帰休制の実施に関する争点は、右実施につき、被告に右「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」があるかどうかである。
右争点に関する主張は、次のとおりである。
(被告)
1 被告は、三の被告の主張1、2で主張したとおりの経営状況であり、また、雇用調整助成金制度の指定業種に属している。そして、労働省から、被告が<1>当該事業部の事業(生産)活動を示す数値が、過去三か月間で前年同期を下回っていること、<2>当該事業部の雇用の状況を示す数値が、過去三か月平均で前年同期を下回っていること、<3>事業活動縮小の理由が、事業主の尽くすべき責務を尽くした上でやむを得ないものと認められることの要件を満たすとの認定を受け、第一次帰休制については、雇用調整助成金の支給が認められている。被告は、第一次帰休制の実施のみでは経営危機を回避することができず、第二次帰休制を実施した。このように、第二次帰休制も、被告が事業主として尽くすべき責務を尽くした上で行ったやむを得ないものである。
2 被告は、平成一一年八月九日、組合に対し、第二次帰休制につき「雇用調整助成金対象の休業について」と題する文書を示し、被告の団体交渉当事者である人事課長名で、第二次帰休制の実施についての団体交渉を申し入れた。これに対して、組合は、社長か池田取締役に会わせろ、人事課長ではだめだと言って、人事課長出席の協議の申し出を拒否した。組合は、第一次帰休制についての必要性を認めているのであり、原告らが、第一次帰休制に応じたのは、賃金全額が支払われるとの条件があったことを理由とするものではあるまい。
3 民法五三六条二項にいう「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」は、故意、過失又は信義則上これと同視すべき事由であると解されているところ、第二次帰休制の実施については、被告は、これを行わなければ倒産の憂き目にあったから、右実施に、労働基準法二六条にいう「使用者の責めに帰すべき事由」が存在するとしても、右の民法上の事由が存在しない。なお、原告らの中に休業期間中に構内に立ち入った者があったとしても、それは被告が就労を受け容れたことを意味するものではない。
(原告ら)
1 原告らは、川崎事業部においては、平成一一年八月一八日以降、休業対象日も全員で出勤して就労し、又は一部の原告らが有給休暇の申請をした。これに対し、被告は、タイムカード上は出勤扱いとし、実際に出勤した原告らに対してほとんど賃金全額を支払い、一部原告の一部期間日についてのみ賃金カットをした。他方、ツクバ事業部では、同年九月六日までは事実上帰休制を実施しなかったところ、同月七日に至って、管理職が原告らのタイムカードを取り上げ、作業着に着替えて工場に入ろうとした原告らに帰るように指示し、原告らによる労務の提供の受領を拒否した日につき、賃金カットした。このように、被告の賃金カットの措置には、一貫性を欠く。
2 被告は第一次帰休制を実施せざるを得なかったと主張するが、平成一一年八月、九月は売上が高い状況であって、右のとおり、原告らは、川崎事業部においては、有給休暇の申請日を除いて、全員が出社して働き、また、ツクバ事業部においては、タイムカードを取り上げるまでの同年八月一八日から同年九月六日までは全員が出社して働いたのであり、客観的にみれば、原告らが提供した労務を受領することは可能であった。
3 第一次帰休制は、その実施の前日又は二日前に組合に示される等、十分な協議なくして行われた。第二次帰休制は、被告の経営的失策に基づき、かつ、組合と協定すら締結しないで強行したものであり、原告らの就労の提供に対する被告の受領拒否は、故意、過失又は信義則上これと同視すべき事由に該当する。
第三争点に対する判断
一 被告の経営状況
1 前示争いのない事実等に後掲各証拠を総合すると、次の事実が認められる。
(1) 被告の事業報告書や有価証券報告書によれば、被告の売上高等の推移は、次のとおりである。なお、被告は、七二期(平成七年一〇月一日から平成八年九月三〇日まで)までは、毎年九月三〇日を決算期としていたが、次期から毎年三月三一日を決算期とすることに変更した。そして、七三期は、経過措置として、平成八年一〇月一日から平成九年三月三一日までの六か月間を事業年度とし、七四期は、平成九年四月一日から平成一〇年三月三一日までの一年間を事業年度とし、以降の期も同様の期間となっている。
事業期 売上高 営業利益 当期未処分利益
七二期 一三九億一四〇〇万円 一億二二〇〇万円 二億六〇〇〇万円
七三期 七六億四五〇〇万円 二億四一〇〇万円 三億七二〇〇万円
七四期 一七七億六七〇〇万円 四億八五〇〇万円 四億三一〇〇万円
七五期 一六〇億四〇〇〇万円 二億三九〇〇万円 △ 七億八八〇〇万円
七六期 一二四億七六〇〇万円 一億九九〇〇万円 △二七億四二〇〇万円
右のように、七五期(平成一〇年四月一日から平成一一年三月三一日まで)において営業利益を上げながら当期未処分損失が生じたのは、特別損失として投資損失引当金繰入額六億六九〇〇万円と棚卸資産評価損三億七八〇〇万円を計上したためであり、また、同じく七六期(平成一一年四月一日から平成一二年三月三一日まで)において当期未処分損失が生じたのは、特別損失として関連会社投資損失引当金繰入額一一億四八〇〇万円と棚卸資産評価損一七億七〇〇〇万円等を計上したためである。なお、七五期において右の特別損失を計上したのは、連結決算に対応して、子会社に対する投資損失引当金等を計上したためである。(甲四九、乙一の1ないし5、二、六の1ないし3)
(2) わが国の企業における設備投資は、近時の不況の影響を受けて、低迷を継続してきたため、金属工作機械製造業は、平成一一年度は、全般的に経営が苦しく、これまで利益を計上していた同種企業が軒並みに赤字転落となっている。このようなこともあって、金属工作機械製造業は、同年四月二六日、労働省から雇用調整助成金の対象業種に指定された。雇用調整助成金は、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して休業手当等の一部(同年九月末日までは三分の二)を助成し、失業の予防を図るものである。この助成金を受けるためには、<1>当該事業部の事業(生産)活動を示す数値が、過去三か月平均で前年同期を下回っていること、<2>当該事業部の雇用の状況を示す数値が、過去三か月平均で前年同期を下回っていること、<3>事業活動縮小の理由が、事業主の尽くすべき責務を尽くした上でやむを得ないものと認められることの三つの要件を満たすことが必要である。(乙九の1ないし4、二一、二三)
平成一一年九月中間決算時における被告と他の主要金属工作機械製造会社とを比べると、他の多くの企業の原価率が八五パーセント前後であるのに対し、被告の原価率は九二パーセントと、やや劣っており、被告の収益率は、良好ということができない。現預金及び所持手形の金額と月売上高の比率を見ると、被告は、約一・二か月であり(すなわち、一・二か月間月営業収入が零の場合、現金類が枯渇する。)、他の企業(三か月以上が過半数)と比べて相当劣っており、短期の資金に余裕がない。また、被告の棚卸資産の回転期間は九か月以上であって、他の企業の多くが六か月以下であるのに比して長期であり、資金の有効活用が図られていない面は否定できない。なお、従業員一人当たりの売上高は、他の企業の三分の二程度と効率が悪い。(乙四の1ないし8、10、八)
(3) 被告は、平成一〇年五月から、ほぼ二ないし四か月毎に、組織変更、工場再編成、事業部制等の導入や大幅な人事異動を実施してきた。また、経費削減策として、平成一一年一月から役員報酬の一〇パーセントのカット、部課長の役職手当の半分カット(給料の約五パーセントカット)、管理職の昇給停止、部課長の夏季賞与不支給等、役員、部課長を中心とする人件費の削減を行った。さらに、一般従業員の残業手当支給基準等の諸規則の改訂による経費削減等を行い、同年七月と八月には総務課長名で従業員に対し残業零を訴えた。その中で、帰休制を実施した。新規学卒等、新人の採用を大幅に縮減し、平成一一年九月二一日、準社員について、契約更新の拒絶を行う等して、余剰人員の削減を図った。被告は、同月三〇日、第三者割当増資を実施し、七億円強を調達した。(乙八、一〇の1ないし6、一一ないし一六、一七の1ないし3、一八)
(4) 被告は、平成一一年五月、船舶用ディーゼルエンジン二基の合計代金二〇〇〇万円の不払に遭った。また、同年六月、同じく船舶用ディーゼルエンジン二基の残代金七五〇万円の不払に遭った。さらに、大型のロール加工専用機の納品を巡り、予定では同年八月に購入先が検収を行って同年九月末までに代金一億三〇〇〇万円を被告に支払うこととなっていたが、種々の口実を設けて検収しなかったため、被告は、平成一二年八月、代金の一部である八〇〇〇万円の支払を受けたに止まっている。被告は、これらの代金回収失敗のため資金不足となり、(3) に摘示のとおり役員等の賞与をカットしたり、各種手当の支払を抑えたり、厚生年金等の支払を滞納したりした。また、従業員の多数が組合員となっているユニオンと協定を締結して、その組合員に対する年末一時金の支払を平成一二年六月二〇日まで延期した。しかし、取引先については、支払を停止すると信用不安等が生じて倒産する可能性があるとして、支払の延期を求めなかった。(乙二二、二七、弁論の全趣旨)
2 右認定事実によれば、被告は、営業損益としては、ここ数年間、利益を計上しているものの、七五期、七六期は、子会社に対する投資損失引当金繰入額や棚卸資産評価損を計上した結果、赤字となったのである。これらの特別損失も計上しなければ、被告の経営状況を判断できないものであるところ、これらの特別損失は、その内容からすれば、右各期に被告の経営陣において予想できないものが突発的に生じたというものではない。
被告をはじめとする金属工作機械製造業は、平成一一年度は、全般的に経営が苦しく、同年四月二六日、労働省から雇用調整助成金の対象業種に指定されている。しかも、被告は、その中にあって収益率が必ずしも良好でなく、短期の資金も乏しいことから、他の同種企業と比べて経営状態が良好ということができない。
右の点に加え、1(4) に認定の代金回収の不成功も参酌すると、被告は、帰休制を実施したり、一時金の半額につき支払の延期を求めることも、やむを得ない経営状況にあったということができる。
二 年末一時金の支払
1 事情変更
一2に説示のとおり、被告は、平成一一年度は、従業員に対して一時金の半額の支払につき延期を求めることも、やむを得ない経営状況にあったことは明らかである。しかし、被告が七五期、七六期に特別損失を計上する必要のあったことは予想し得たことであり、また、わが国の企業における設備投資が近時の不況の影響を受けて低迷を継続したことは、公知の事実であり、その中にあって、発注元の中には契約代金を約束どおりに支払えないものが生ずることは、当然に予測すべき事柄である。これらの点に、七六期(平成一一年四月一日から平成一二年三月三一日まで)においても約二億円の営業利益があることも総合すると、本件においては、被告と組合との間で年末一時金に関する協定が成立した平成一一年四月二一日からその支払日である同年一二月三日までの間に、被告が予想し得ない事態が生じたとは、到底いうことができない。
なるほど、被告は、他の労働組合であるユニオンとの間で年末一時金の半額の支払期日の延期に関する協定を締結しているが、このように、被告の債権者に対して支払期日の延期を求めることができるとしても、これに応じるかどうかは、債権者の意思次第であり、被告に倒産法制における法的手続がとられていない以上、債権者にこれに応ずべき義務のないことは明らかである。特に、被告は、取引先については支払の延期を求めていないのであり、一般債権よりも法律上厚い保護が講じられている年末一時金について、事情変更の原則が適用され、支払期日が延期されるものということはできない。また、ユニオンとの協定の締結や管理職以上の一時金のカットの事実があるからといって、原告らの年末一時金の半額の支払期日が当然に延期されることはない。被告の主張は理由がない。
2 権利の濫用
被告と組合との間で年末一時金の半額の支払期日の延期に関する協定が成立していない以上、原告らは、平成一一年四月二一日に被告と組合との間で成立した年末一時金に関する協定に基づき、未払の年末一時金の半額の支払を求めることができることは当然である。なるほど、そのように解した場合、組合の組合員である原告らとユニオンの組合員等他の従業員との間で不平等が生じることとなるが、一時金の支払時期というような細部の労働条件についての不統一は、被告に複数の労働組合が存在する結果不可避的に生じる事柄である。この点、被告は、被告が年末一時金の半額延期を提案したのに、組合は交渉すら拒否したことが不当であるかのような主張をする。しかし、甲一ないし三、四〇によれば、年末一時金に関する協定は、被告の常務取締役と組合の委員長との間で交わされており、また、他方の労働組合であるユニオンとの団体交渉については担当取締役が出席していたこと、しかるに、被告は、組合に対して、総務課長名の文書により半額の支払期日の変更、すなわち、右協定の変更を求めたため、組合は、被告の右態度が組合を軽視し、侮辱するものであると抗議するとともに、増資により得た七億円の使途等被告の資金繰りの実態を明らかにすることを求めたこと、被告は、右組合の質問に対して資料をほとんど出さず、明確な回答をしなかったため、組合は、年末一時金の半額の支払延期に応じなかったことが認められる。そうすると、被告がユニオンとの対応と比べて、手続的に組合を差別したことは明らかであり、組合が年末一時金の半額の支払延期に応じなかったことにも無理からぬ点があり、右支払延期に応じなかったことが権利の濫用となるものではない。
被告が、平成一二年六月二〇日、原告に対し、年末一時金の半額に相当する金員を支払った結果、原告らの年末一時金に関する請求金額は、原告ら全員分を合わせても二一万八〇一六円とこれに対する平成一二年六月二一日からの遅延損害金であり、その請求をしても、被告が倒産するとは考えられないことも斟酌すると、原告らにおいて年末一時金の残額等の支払を求めることは到底権利濫用ということができない。
3 黙示による弁済充当の合意
被告主張の事情があるからといって、原告らと被告との間で、黙示による弁済充当の合意があったと認めるには足りない。そして、未払一時金についての平成一一年一二月四日から平成一二年六月二一日までの商事法定利率年六分の割合による遅延損害金は、別紙債権目録の遅延損害金欄記載の金額となるから、民法四九一条の規定に基づき、先ず、これに充当し、その残余を未払一時金に充当すべきである。そうすると、未払一時金の残金は、別紙債権目録の遅延損害金欄記載の金額となる。
三 第二次帰休制
1 前示争いのない事実等に後掲各証拠を総合すると、次の事実が認められる。
(1) 組合は、従前から通商産業省等に対して工作機械産業を不況業種に指定して、雇用調整助成金制度を適用するように要請してきた。そこで、被告から第一次帰休制についての協定締結の申出があったとき、組合は、被告の通知が実施直前で事前に組合と十分な協議が尽くせない点に抗議したものの、賃金が一〇〇パーセント補償されることから、これに応じることとし、さらに、教育訓練目的の一時帰休を考えてはどうかと提案をした。なお、被告は、右申出の際、組合に対し、会社経営状況如何により第二次帰休制を実施する必要があり得ることを伝えた。第一次帰休制に関する協定は、組合執行委員長と川崎、ツクバ各事業部長との間でそれぞれ取り交わされた。(甲二四、乙二七)
(2) 被告は、平成一一年八月九日、組合に対して、同月六日付け人事課長名の「雇用調整助成金対象の休業について」と題する文書をもって、同月一八日から同年九月一五日までの間の第二次帰休制実施を提案した。その中で、被告は、本来なら第一次帰休制においても労働基準法二六条の最大四〇パーセントまでの賃金カットをするのが通常であるが、協議をして組合員らの同意を得る時間的余裕がなかったこと及び当面九月末日まで雇用調整助成金の支給率が高かったことから、賃金カットの提案を行わなかったが、会社の状況はますます悪くなっており、第二次帰休制においては、休業日の賃金が六〇パーセントとするとの提案を行った。なお、被告は、平成一一年六月に取締役の人事異動を行うまでは、労働組合との交渉相手として労務担当取締役を出席させていたが、右人事異動後、ユニオンとの団体交渉については労務担当取締役が出席するものの、組合についてのみ、何らの説明もなく、交渉担当者を人事課長に変更していた。
右第二次帰休制実施の提案に対して、組合は、八月一一日、労務担当取締役を訪ねて、役員の団交への出席を求めるとともに、「雇用調整助成金における休業に関する申し入れ」と題する文書をもって、次の理由で、組合との協定がなければ、休業には応じられない旨を申し入れた。<1>人事課長名の文書では正式な提案と受け取れない。<2>複数の労働組合のうち、組合との間で団交での説明の機会を持たないのは差別・不利益扱いである。<3>六〇パーセント補償なのに、個人の休業日数が一律でないのは問題である。<4>多数組合と協定したことをもって、協定も締結しないで第二次帰休制を実施するのは許されない。<5>この機会に教育訓練などを行って、労働者の活力を生み出す施策を実施すべきである。<6>経営状況等を団交の席で説明すべきである。
労務担当取締役は、面会を拒否し、被告からの説明や協議もされずに終わった。その後、被告は、同月一八日、再び人事課長名で、組合に対し、九月度の助成金の申請を八月一二日までに行う必要があることから、第二次帰休制を実施することに踏み切ったことを通知するとともに、なお書きで、被告としては、いまだその機会が設けられていないが、いつでも話合いの場に参加する用意があることを伝えた。そして、同月二七日付け人事課長名の書面により、組合に対して、第二次帰休制を実施し、休業指定日に従業員が出勤しても休業扱いをする旨を伝えた。
なお、被告は、同月一〇日、ユニオンとの間で、第二次帰休制実施について協定を締結した。(甲八ないし一〇、二四、四〇、乙二〇、二五)
(3) 被告は、実施計画を立てて第二次帰休制を実施することとした。その内容は、平成一一年八月二〇日から同年九月一五日にかけて、従業員一人当たり四日ないし六日帰休するというものであるが、原告らは、右被告の計画に従わず、出勤等を行った。前示争いのない事実等3(3) に摘示の原告らは、平成一一年九月の賃金支払において同(3) に摘示のとおり一部カットされたが、同原告らの勤務状況等は、次のとおりである。その他の原告らは、通常通り勤務し、賃金もカットされなかった。
川崎事業部に勤務の原告村田一男、同小川隆、同金山和男は、休業指定日をすべて出勤して仕事をしたところ、同小川隆につき五日間、村田一男、同金山和男につき一日の休業扱いとされた。原告小橋純児は休業指定日のうち一日につき有給休暇を提出して休日を取り、その他の休業指定日に出勤して仕事したところ、五日間の休業扱いとされた。原告小長谷元昭は、休業指定日のうち二日につき有給休暇を提出して休日を取り、その他の休業指定日に出勤して仕事したところ、右有給休暇申請日のみ休業扱いとされた。原告清水秀男は、休業指定日のうち一日につき有給休暇を提出して休日を取り、その他の休業指定日に出勤して仕事したところ、右有給休暇申請日のみ休業扱いとされた。
ツクバ事業部に勤務する原告松本勉、同佐久間圭二、同吉川喜代志、同桜井和夫、同波多野敬三及び同藤本暢隆は、九月六日までは、通常通り勤務し、同月七日、作業着に着替えて工場に入ろうとしたところ、同事業部の総務課長が右原告らのタイムカードを取り上げ、右原告らに帰るように指示したため、自宅待機等した。すると、右いずれの原告についても、九月七日から一五日にかけて三日間の休業扱いとされた。
(甲一一、一二、二〇、四〇、弁論の全趣旨)
2 第二次帰休制のように労働者の賃金を一部カットして帰休制を実施することは、労働者に就労の権利の一部行使制限や賃金の一部カットといった不利益を与えることとなり、就業規則を含む労働者との雇用契約の一部を一時的に労働者に不利益に変更することにほかならないから、就業規則の不利益変更に適用される法理に準じて、そのような帰休制が、右のような不利益を労働者に受認させることを許容し得るような合理性を有することを要するというべきである。そして、右合理性の有無は、具体的には、帰休制実施によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の帰休制実施の必要性の内容・程度、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応等を総合考慮して判断すべきであり、右合理性がある場合は、使用者が帰休制を実施して労働者からの労働の提供を拒んだとしても、民法五三六条二項にいう「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」が存在しないものというべきである。
これを本件について見ると、先ず、一2に摘示のとおり、被告は、当時、帰休制を実施することも、やむを得ない経営状況にあったのであり、被告が帰休制を実施する必要性があったということができる。そして、第二次帰休制は、平成一一年八月二〇日から同年九月一五日にかけて、従業員一人当たり四日ないし六日間帰休し、帰休日は六〇パーセントの賃金が支払われるというものであって、その結果、従業員一人当たり一・六日分ないし二・四日分の賃金がカットされるに止まることから、その経済的な不利益は、右の点のみを見れば、さほど深刻なものということができない。しかし、1(2) に認定の事実及び弁論の全趣旨によれば、被告は、雇用調整助成金の取得も目的として第二次帰休制を実施したことは明らかであるところ、右助成金は、従業員の賃金の三分の二、すなわち約六七パーセントの額となることから、被告は、受給可能な助成金よりも少額の賃金しか従業員に支払わないこととなり、その対比において、従業員が不当に賃金をカットされているものとも評価することができる。
次に、労働組合との交渉の経緯等を検討すると、被告は、従業員の多数が組合員となっているユニオンとの間で、同年八月一〇日に第二次帰休制実施について協定を締結しており、被告の従業員の多数(何パーセントであるかについて認定できる証拠はない。)の者は、第二次帰休制の実施をやむを得ないものと考えていたことが推認し得る。しかし、被告は、組合との間で第二次帰休制実施について協定を締結しておらず、また、1(2) に認定のとおり、右協定が締結されなかったのは、被告がユニオンとの団体交渉については労務担当取締役が出席するものの、同年六月以降、組合についてのみ何らの説明もなく、交渉担当者を人事課長に変更したこと、その点を組合が抗議しても、組合が交渉を拒絶したものと判断して、複数ある労働組合のうち組合に対してのみ人事課長を交渉担当者とした理由を的確に説明しなかったこと、及び、組合からの要求にもかかわらず、第二次帰休制実施に関して十分な説明や資料の配付を行わなかったことに起因しているのである。そうすると、被告は、組合に対して、真剣かつ公正な方法で誠実に交渉したものとは到底いうことができない。
このように見ると、第二次帰休制については、なるほどその必要性が認められ、カットされる賃金はさほど高額ではなく(実際にカットされた分は、被告が予定していたものよりも少額である。)、かつ、多数の従業員が加入する労働組合と協定を締結している点のみを捉えると、これを実施することに合理性が認められるように見える。しかし、組合とは真剣に交渉せず(この点、被告は「雇用調整助成金対象の休業について」と題する文書において、組合と協議をして組合員らの同意を得る必要性のあることを自認していたことを指摘すべきである。)、しかも、その実施状況も、実施計画とはかけ離れたものであったのであり、これらの点を総合すると、第二次帰休制の実施が合理的なものということはできない。したがって、民法五三六条二項にいう「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」が存在するものといわなければならない。
3 1(3) に認定のとおり、賃金カットを受けた原告らは、いずれも、現実に勤務したり、有給休暇届を提出したり(弁論の全趣旨によれば、被告は、右有給休暇届に対して時期変更権を行使していない。)、労働の提供を行ったが、その受領を拒否されているのであるから、労働契約どおりの賃金請求権を有する。したがって、右原告らがカットされた賃金の支払を求める本件請求には理由がある。
四 よって、原告らの本件請求は、いずれも理由があるからこれを認容することとし(別紙債権目録の請求金額欄記載の金額は、未払一時金の残額と第二次帰休制実施の結果カットされた賃金の合計額である。)、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 南敏文 裁判官 矢澤敬幸 裁判官 藤澤裕介)
別紙<省略>